青春ライチ!

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青春ライチ!

 ごくり、と飲みこめば口に広がるライチの味。そもそも、ライチっていうフルーツがよく分からない。食べる機会もどこにあるのか、わからない。  このジュースを飲むのは、彼が好きだから。 ▽  部活終わりで走ってきた彼は、汗を額からポタポタと滴らせる。そして、せっかく可愛くセットした私の頭を乱すのだ。 「おつかれ! のぞみ〜今日もかわいーね!」  ちゃら男のようなことを言いながら、本当は恥ずかしがり屋な彼はただの幼なじみ。 「やめてよ!」  手を振り払えば、サトシは特に気にも留めず私 のジュースへと目をつける。 「あ、いいなぁライチジュースじゃん。ひとくちちょーだい」  言い終わるから言い終わらないかの間で、私のジュースを奪い取ってごくごくと飲み干す。 「のぞみ、ほんとこれ好きだよな」 「サトシこそ、毎回私のジュースどんだけ飲むの?」  ジュースを奪い返して、ギュッと握りしめる。今日も、サトシとキスできた。間接キスだけど……自分でもどうして、こんなに素直になれないのかわからない。 「でもさ、ライチって食べたことないんだよね。俺。どんなやつなんだろう」  サトシは、スマホでぽちぽちとライチを検索し始める。横から覗き見をすれば、「初恋」の文字が目に入って動揺する。どんどんと顔に熱が集まってくる。 「なにライチみたいに顔真っ赤にしてんの?熱?」  私の顔を覗き込むサトシに、私の熱はなおさら急上昇を続ける。心配そうに見つめるサトシは、私を置いてどんどんと大人になっている。  男女混合で、走り回っているだけだった小学生に戻りたい。この気持ちに気付いてから、距離感がうまく掴めない。  ジュースを飲もうと思って、蓋を開けようとすれば力が入らず蓋は1mmも動かなかった。 「本当にどうしちゃったわけ?のぞみ」 「サトシはどんどん変わるよね」 「のぞみだってどんどん可愛くなっていくよ」  冗談なんだか、本気なんだか分からないサトシの言葉にため息が漏れる。 「置いて行かれたようで寂しかったとか?」 「うん」  いつもよりも素直な言葉に、サトシが目を丸くする。気づけば、私たちの距離は0センチ。ガタンと物々しい音を立てて、ジュースが落ちてる。 「え」 「ライチの花言葉って、初恋なんだって。俺らみたいだね」 「え」 「のぞみもそうでしょ?」 「うん」  ジュースを拾って私に差し出したサトシの笑顔はとても真っ赤に熟れていてライチのようだった。 「えーっと、だからあの」  急にしどろもどろになって、言葉に詰まり始める。 「幼なじみから、恋人に変わってもいいんじゃないですか? みたいな?」 「う、うん」 「好きだよ、のぞみ」
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