尊し青に泣く

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 もっと単純で、素直になれたらどんなに楽だろう。  ――成川とずっと一緒にいたい。  それだけなのに。 「……本気、じゃないよ」  力なく微笑んで見せると、成川は一瞬、寂しそうに笑った。 「……だよな。咲良は俺なんかじゃなくて、いるもんな、きっと」  南口に到着する。 「送ってくれてありがとう」 「おう。また、来週な」  背を向ける成川に「また、来週」と小さくつぶやく。  目覚めなければよかった。夢のままならよかった。関係が壊れるかもしれなくても、友達のままじゃなくて恋人になればよかった……?  でも、成川とずっと一緒にいたいんだ――わたしは。  見上げると清々しいほどに青く澄みわたる秋の空が広がっていた。どうしようもなく透明で、この美しい日の始まりに、わたしは泣いた。  声を出して、泣いた。 《了》
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