書き方について その3

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書き方について その3

 前回は捻り出しでした。さて、今回は肉付けってとこですかね。前回同様、投稿原稿を例として、お話ししていきます。  時代背景は江戸。江戸っぽい感じの用語や空気感の演出が必要です。    主人公の名前。女性は当時、平仮名の名前といったイメージがあるため、割りと多そうな「たえ」としました。はじめはこの字面だったのですが、平仮名二文字は文章の中に紛れてしまいます。そのうえ、平仮名が多いところでは読み辛い。  そこで「え=ゑ」にしました。平仮名が多くても差別化でき、かつ、現在はほぼ名前では使用されていないでしょうから、昔の空気感も出ます。まつとか、うめでも良いんですが、たゑ。結果的に内容に添った名前になりました。  不思議なんですが、命名してから物語を進めると、なぜか名前に添った生きざまが描かれるんですね。余談ですが、面白半分で人数が多い作品のキャラで姓名判断をやった事があります。八割は作中の行動や性格、運命(展開)を当てているという結果になり、苦笑しました。  戻します。    主人公の他は、彼女の夫、薬売り、即身仏が登場します。  夫はたゑが動く動機付け。  薬売りは行動を起こすきっかけ。  物語上の必然性としての即身仏。  名前が決まった時点で、実は話の筋道がほぼ見えているので、使う言葉と必要最小限の説明を織り混ぜて書いていきます。  夫の病は当時不治の病の結核で労咳。症状は続く熱と咳。末期になると喀血や胸痛も生じ、衰弱し、窒息で亡くなることも。でも、病気の説明は細かくすると興醒めします。病気が死病であることが前提で、夫は死ぬ運命であることだけが解るような書き方をすることにします。  伝染病であるため、江戸でも忌み嫌われていたと思われるので、隔離し、孤立状態にして、下衆な男として薬売りを投入。薬として木乃伊を手にすることが出来る状態を作るところまで持っていきました。  そこで薬売りを投入。安い薬を高く売り付けることが目的です。でも、たゑたちはお金に困っているはず。じゃあ、どうやって薬がたゑの手に渡るか。  うん、これは薬売りが下衆設定だから、たゑを襲わせてしまえ。花代で薬を置いていかせれば、たゑが木乃伊を必要とする理由付けになるよね。  はい、こんなもんです。想像や流れは割りとセオリー通りの物になっていきますが、一番流れとして自然ですし、納得も出来るかと思います。破綻もしていないと思います。  これでようやく、たゑが人目を忍ぶようにして、この日暮れ時に山へ向かい、暗くなる頃に村に戻るという状況が自然になります。 ※再び続きます。
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