夜勤で…

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ

夜勤で…

 男性用の立ちトイレの水が、勝手に流れて下さいますだ。清掃の為に、定刻で流れてるよと言われるのですが、夜勤者一堂、 「んなことない。  ランダムだし、  センサー目隠ししても、  流れるんじゃぁ!」 と言います。  はい、流れてます。  いきなり、ジャバーって。  特に丑三つ時って時間帯に。  しかもですね、頻回に流れている時期に、ほぼ全ての夜勤者と、一部の利用者が、口を揃えて、人の気配を感じてるんですよ。どんなと聞けば一様にこう答えるんです。  長身で細身の男性。  これは、間違い無くいるねって話になりました。利用者からは、  男が戸口から覗いてた。  勝手に入って来た。  上から覗かれて嫌だ。   ってのが多く、ときには居室から「あっち行け、この馬鹿!」なんて怒鳴り声もあったりしました。  認知症の高齢者なので、幻覚の可能性もあるんですが、怒鳴り声のある日は、トイレの水音が多かったなぁと、今では思います。    かく言う私も、一度だけ、はっきりと覗かれた気配を感じました。  これが、よく「あっち行け!」と怒鳴ってる方の部屋での出来事。  二時にオムツ確認のため、ベッドの足元で用意をしていた時でした。利用者を起こしてはいけないと、常夜灯のみの所でしゃがみ、物品を取り出していると、何か近くに立ってる気配が、薄っすらとありました。  まあ、これ位は、その時期しょっちゅうだったので、嫌だな程度で作業続行。大抵は何事も無いのですが、この日は違いました。  気配がいきなり濃厚になり、  身体の右側に張り付き、  一緒に鞄を覗き込むのが、  はっきりと解りました。  男性で、細身。  身長は180センチを切るくらい。  右肩の後ろから、  身を乗り出すように、  鞄を真上から見下ろしていました。  見えた訳ではありません。  気配で大体感じ取ったイメージ。  全身がザワザワして、  一気に鳥肌が立ちました。  ちなみに、この事があった頃は、利用者の一人が、よく、誰かが部屋を覗くのよねと、話しはじめた頃で、トイレの不自然に流れる水や、男性らしき何かがいるといった話しは誰もしていませんでした。  この出来事があってから、ひと月以上経ってから、トイレの水洗異常の話しや、いるのが背の高い男性ではないかと話題に登るようになったのでした。  さて、覗き込まれた時の私ですが…  ガチギレしましたwww  ふざけんな!  忙しいんじゃ!  邪魔すんじゃねぇ!  心の中でプリプリしてたら、気圧されたのか、その時以降は、近寄る気配は、今のところありません。  気迫って凄いね。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!