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「………」
とは言え、仮に別働隊が彼らを探し回っていたとしても、そこまで心配する必要は無いのかも知れない。皮肉な話ではあるが、彼の愛車が軽自動車だからだ。
そもそも軽自動車は、車体の形状がどれも似通っている為、色以外はほぼ同じに見えてしまうという困った特徴がある。
ただでさえ車で溢れ返っている都内の道路で、似たような軽自動車のナンバー全てをチェックするなど、余りにも非現実的な作業である事は確かだ。
——まぁ…だからこそ奴等は、俺達を誘い出そうと必死なのだろうが…奴等だってそろそろ気付く頃合いだ…離れていても尾行可能な俺達が、危険を冒してまで再び接近する理由など存在しない事に…その当たり前に気付いた時、果たして奴等はどう動くのか…
源田は今、刑事の基本に立ち返ろうとしていた。即ち、自分が犯人の立場ならどう動くかを考える事で、敵の次の行動を予測しようと試みたのだ。
——発信機も無しに自分達を尾けて来る謎の軽自動車…時間差を置いて追尾可能な厄介な敵を確実に始末するには、自分達が通った道に仲間を待ち伏せるのが最も手っ取り早い…一般道では駄目だ…車の数が多すぎる上に、同じ方向に向かうルートが複数存在する可能性が高く、敵が必ずしも同じ道を通るとは限らない…となれば、残る方法は一つ…
地図帳を眺める源田の目に、ふと懸念の色が浮かぶ。迷走にも似た敵の動きが、ある準備が整うまでの時間稼ぎに過ぎない…そんな気がしたのだ。
それを裏付けるかのようなタイミングで、少年が声を掛けて来た。
「…源田さん、敵の車が少し変わった場所に入りましたけど」
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