その1

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その1

その1 麻衣 私は幼い頃から、直観が鋭い方だった 自分には予知能力、あるんじゃないかってね… そう思ってた時期もあったくらいだ(笑) で、もうすぐアキラが来る…、”ここ”に あのタクヤとかって奴使って、信号送るまでもないのはわかっていたけど まあ、ああいった類は”使い癖”つけとけば、何かと”動いてくれる”からね ... アキラが私に話すことは、もう全部わかってる あの人、私にはもう会いたくなんかないはずなんだけどね でも、結局会いに来る それも、おけいに会うより先に… 要は自分の大切な女の為に、私とは会わずにいられない それに…、私が”飛んだ”あの日、私の部屋で交わした約束もアキラの頭にあるんじゃないの、フフ… あんなの、忘れたで済むようなもんだけど 全く分かりやすい人だよ おけいにしたら、そういうところもいいんだろうが、疲れるわ、あれじゃ(笑) ... 私にとっての好敵手は結局、荒子さんとおけい、この二人だけだった ほかは所詮、私の相手じゃなかったよ 相川さんにしても、砂垣さんにしても… 祥子だって、多少手ごたえは感じたが、単なるクリアすべき相手にすぎない 対して、あの二人は、とびっきりの”いい”相手だった 狂犬娘の荒子さんとは、思いっきり嚙みつきあった 真正面からぶつかって、お互い潰しにかかった壮絶なもんだったが、なんかスポーツやってる感覚だったな 不思議と気持ちはスカッとしてた まあ、やってることは互いに骨の折り合いってんだから、周りから見ればグロイよな どこがスポーツだよってとこだ、ハハハ… ... そんで、おけいの場合だが…、これは情念とかのぶつかり合いだった もう、アタマも体もアッチッチになっちゃって、お互い一線超えてたと思う なんでそうムキになれるのかなって考えても、答えが見つからないんだ 最初のきっかけは、共に憧憬する、亜咲さんを巡ってのことからだった そのあとの南玉連合を共に背負った両頭体制でも、常にけんか腰で火花散らしてな、ウチら アイツとはもっともっとやり合っていたかったんだ それがアイツ…、この夏にアキラと出会って、あっさり私にトンズラを宣言しやがった だけど皮肉なことに、その後も私らがぶつかり合うことに、終止符が打たれることはなかったとね 今度はアキラの存在を介して… さらに深く激しくだわ… もっとも、私が仕掛けなかったら、この展開はない 今じゃ、おけいは、私を殺したいほど憎んでることだろう おけい…、お前をそこまでも熱くさせられて、私は嬉しいよ きっと、私らの間の火花が消えることなんてないんだよ 例え、お互いが死んでもさ… やっぱ、イカレてるわ、私
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