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「ここ。この記事」
と彼女が目次を強制的に開き、大きな見出しが踊る記事を右人差し指で指差した。
俺はふぅんと鼻を鳴らして、また半開きの目で興味なさそうに大きな文字を見た。
「偽のヒーロー、正体みたり、彼の血塗られた過去」
そういうタイトルが付いた記事だ。
またまた大仰な煽り文句を付けたもんだな、我ながら笑っちゃうよ、と自嘲する。
作者は……、地球防衛隊。正体が不明な文筆家が書いた記事。
地球防衛隊は、地球温暖化を防止する為の論文を書き、食糧危機で飢え死んでいく子ども達を題材にしたノンフィクション作品を書く。核兵器の脅威を広く世に伝える為にSF小説を上稿する。戦争の悲惨さを知らしめるエッセイを綴る。
そして今回、偽りのヒーローであるシリアルキラーの正体を暴いた記事を書いた。
ふうと深呼吸をし心を落ち着ける。
目の前のカップで紅茶が舞い踊る。
大丈夫、彼女にはバレてない、俺が地球防衛隊だという事は。
…――隠し事か。
人には他人に絶対に言えない秘密が、一つや二つは必ず在る。
さしずめ、書く仕事をしている俺の隠し事は、書く仕事といったところだろうか。
まあ、そういう事。
そうだな。……最後にこう言って締めておこうか。
また機会があれば地球防衛隊の記事を読んで頂ければ幸いと。
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