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ふぅ……
しばらく寝室に篭っていた俺は深呼吸をしてから再びリビングへ戻った
大丈夫、普通に接しろ
いい加減朔夜に心配掛けるのはやめろ
『さっきはごめん。今日ご飯何?』
ソファーに座っていた朔夜に話しかけた
「食べる?」
『うん、落ち着いたら腹減っちゃった』
「……分かった。用意するから待ってて」
『や、いいよ!自分で用意するから。冷蔵庫ん中?』
「憂は座ってて」
『……じゃあ一緒にやるよ』
「分かった」
『朔夜はもう食べた?』
「いや、まだ……」
『じゃあ一緒に食べよう』
「うん」
特に会話もせずテレビを見ながら朔夜と一緒に晩飯を済ませた
そうだ
俺はまだ朔夜に言わないといけない事があるんだ
『なぁ朔夜』
「ん?」
『大分前に言っていた事……あれ、覚えてる?義父に家賃突っ返すって話』
「勿論覚えてるよ」
『あれってまだ有効?』
「必要ならば今直ぐにでも渡せるけど」
『え?』
立ち上がり、朔夜は別室へ向かいそれから何か分厚い封筒を持って俺の元へやって来た
「敷金礼金、それから3年分の家賃と引越し費用その他もろもろ……
まぁざっと300万かな」
『……は?ちょっと待って多過ぎるんだけど。何その敷金礼金って……ってかいつの間にこんな……』
「憂から話を聞いた時からいつでも渡せるように用意してあったんだ。
後で足りないとか文句言われないように上乗せしといた。これなら義父も文句言わないだろ?」
『い、いやいやいや!!』
300万って……何そのおかしい金額
『逆にそんな大金俺が持ってるの不審に思われるから!高校生の分際で!』
「そう?」
『朔夜は金銭感覚がおかしいんだ』
「大丈夫、突っ返す時は俺もついて行くから」
『待ってそれは絶対にダメ』
「…………」
『確かにお金は朔夜から借りるけど……ごめん、これだけは俺自身の問題なんだ。だから上乗せとかしないで金額もきっちり家賃分だけにして欲しい』
「分かった」
金を突っ返して俺は完全にあいつらと親子の縁を切る
あの人からしたらそんな縁はもうとっくの昔にないんだろうけど、俺からしたらたった1人の血の繋がった母親だったから……
父親は違うけど、これから産まれて来る俺の妹
子供に罪はない
だけどきっと俺はその子を自分の妹だなんて思う事は出来ない
初めから俺みたいな兄貴なんていない事にしなきゃいけないんだ
俺は捻くれ者だから
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