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部屋の中は勝哉さんの言った通り本当にガラガラで、何一つ物が置かれていなかった ただ電気だけが取り付けられている状態 「春になりゃどっかの野郎に取られちまう可能性があるだろ?だから先取りだ!」 「ですが家賃が勿体無いですよ」 「ババアに前借りしてっから大丈夫だよ」 自分の部屋の間取りと全く同じ勝哉さんの部屋…… 何も置いてないせいか大分広く感じる 「せめてカーテンぐらいは先につけないといけませんね」 「あ?」 「だって外から丸見えじゃありませんか。抱き着きたくても出来ないです」 「んじゃあとっととお前んとこ戻ろうぜー」 「ふふっじゃあこれを……」 勝哉さんの部屋の鍵を返そうとしたら、彼はポケットからもう1つ鍵を出した 「あるからいらねーよ」 「えっ」 「俺がいねー間暇だったら片付け頼むわ」 そう言って私を置いたまま勝哉さんは部屋から出て行ってしまった これはつまり合鍵…… 「勝哉さん!」 「うおっ!!!」 自分の部屋に戻ろうとした勝哉さんの後を直ぐに追いかけ後ろから抱きついた 「嬉しいです」 「おー」 「ですが私の部屋のスペアは母さんが持ってまして……」 「まぁいーんじゃね?お前が独り立ちしてからで」 「ありがとうございます。それまで待っていて下さいね」 「ん。っつーかお前……」 誰かに見られると言ったくせに外で思い切り抱き着いてしまった つい…… 「さ、早く部屋に入りましょう」 「おー」 そして自分の部屋に再び入ろうとした時…… 「孝浩」 と、私の名前を呼ぶ声が聞こえた 「父さん……」 何と階段を登って来ていた父にそれを見られていたなんて思いもしなかった .
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