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朔夜がいない間にさっさと済ませるべきだと俺は判断した
何せもうすぐ卒業するしアパートの契約ももう少しで終わる
余計な心配はもう掛けたく無い……
さっさと終わらせて早くあいつらと縁を切るべきなんだ
いつでも行けるようにと朔夜が置いておいてくれていた大きくて分厚い封筒
中身を確認すると、何も変わらず前と同じ金額が入ったままだった
ちゃんと家賃分だけにして欲しいって言ったのに……
1枚1枚きちんと数え直し、残りを元にあった場所に戻した
『ふー、ふー……ふぅ』
約3年ぶり……
ここを出てから一度も帰らなかった俺の実家
そこまで遠くなくて、よくある住宅街の一軒家
久しぶりに使う実家の鍵を震える手で取り出し、鍵を開けて俺は3年振りに実家の中に足を踏み入れた
「あら、誰かと思ったら……」
事前に連絡していたから母親がいる事は分かっていた
『あいつは?』
「あいつって……義理だけど父親でしょ?仕事の都合で出勤してるわ。午後には帰って来るわよ」
『そ。んじゃあ……』
リビングを出ようとした時、母親はこう言った
「何処に行くの?あんたの部屋はもう無いわよ」
『…………』
「そうそう、2階のクローゼットの中に残ってあったあんたの荷物が入ってるからついでに持って帰ってちょーだい」
『…………』
「どうせ暇でしょ?段ボールの中に纏めてあるから郵便局に行って送ればいいわ」
『分かった』
義父が帰って来る間この人と二人きりになりたくない俺は母親に言われた通りにする事にした
実家に置いたままになっていた俺の思い出の品達……
言われた通りかつて自分の部屋だった場所に行くと、本当にただの物置部屋になっていた
その部屋の隅にひっそりと置かれてあった段ボール
俺の荷物……
郵便局に着いた時、朔夜から着信があった
大丈夫、落ち着け……
それから用事を済ませ、再び実家に戻ると玄関に革靴があった
帰って来たか……
ぐっと唇を噛み締め、俺は部屋の奥へと入って行った
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