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「憂、大丈夫か?」 『……おぇ……ッ』 実家を出てから何度か吐きそうになった 道端で俺の背中を摩ってくれる朔夜 『ごめ……早くここから離れ……っ』 「分かった。直ぐに移動するからしっかり押さえてて」 そう言いハンカチを口元に当ててくれた 『…………っ』 朔夜には聞きたい事が山ほどある だけど、俺自身今それどころじゃなくて…… 「落ち着いた?」 『うん』 何とか自分のアパートまで帰って来れた 朔夜に支えて貰いながらだけど…… 「飲んで」 『……ん』 水を渡され、それを一口飲むと体の中がスゥッと冷たくなったような気がした 『……学校は?』 「行ってない」 『行ってないからここにいるんだよな』 「うん」 『……いつから分かってたの?俺が今日実家に行こうと思ってた事』 「最近憂の態度がよそよそしかったから」 『尾けたの?』 「うん、ごめんね」 『…………』 「憂こそ……荷物整理しに帰るって言ったくせに」 『うん、ごめん』 「…………」 だけど、朔夜のおかげで俺が待ち望んでいた事をやり遂げる事が出来た 朔夜が居てくれなかったら結局何も出来ないまま金だけ取られて言いくるめられていたかも知れない 朔夜がいてくれたから…… 『……っ』 気が抜けた瞬間両目がカーッと熱くなって、ポロポロと涙が溢れ出て来た 『俺、ちゃんと言えたかな……グスッ』 「大丈夫、ちゃんと言えてたよ」 『本当にこれであいつらと関わらなくてもいいのかな』 「うん」 『もしまた何か言って来たりしたら……』 「大丈夫、そんな事は絶対に俺がさせない」 『……どうやって?』 すると朔夜はポケットの中から何かを出した 「ボイスレコーダー、さっきの会話は全部録音してるから」 『…………』 「憂の事だから丸腰で行ってたでしょ?」 『うん』 「証拠はある。だから本当に大丈夫」 そう言って優しく笑い、朔夜は俺の頭を優しく撫でた 『嫌な思いさせたよな……本当にごめん』 「大丈夫。憂は何も悪くないよ」 『だけどあいつら……』 「もう黙って」 『……』 二人を前にして怒る素振りを一切見せなかった朔夜 本当に我慢してくれていたんだ 俺の為に .
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