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花束を持ったまま俺は固まってしまった
確かに卒業したら一緒に暮らすって言う約束だったけど……
『ちょっと待って結婚って……』
「パートナーシップ制度って知ってる?」
パートナーシップ制度?
聞いた事のない言葉を言われて更に頭がちんぷんかんになった
「パートナーシップ制度って言うのはね、戸籍上は同性であるカップルに対して、婚姻と同等のパートナーシップであることを承認する制度のことを言うんだよ。
簡単に言うと同性のカップルを結婚に相当する関係と認める制度だね。
これをする事によって憂が俺のパートナーとして住宅への入居が認められたり、病院で家族として扱ってもらえたり……」
『家族……?』
「うん」
朔夜が……
俺の家族に……?
「日本では同性のカップルは結婚出来ないけど、パートナーとしては認めてもらう事は出来るんだよ。その事については俺もまだまだ勉強不足だけど……」
結婚……
婚姻…………
『ちょ、ちょっと待って、いきなりそんな……』
「憂、俺と家族になって下さい」
そう言ってポケットから取り出した物は……
『……っ』
それを見た瞬間急に顔がカーッと熱くなって一気に視界がぼやけた
「受け取ってくれる?」
『……まだ学生だろ』
「分かってるよそんな事」
『ははっ……指輪2個もいらないじゃん』
ペアリングのついた手で涙を拭いながら言った
「これはこれ、それはそれだよ。
……ね、ハンカチ持ってこれば良かったでしょ?」
そう言い、朔夜は優しく笑った
『だけどこんな俺みたいな奴……ぅぅっ……っ』
「こら。俺みたいな奴って言っちゃダメって約束でしょ」
『けど……』
俺が戸惑う中朔夜は話を続けた
「ずっと考えていたんだ。どうすれば本当に憂を安心させてあげられるのかって……その時浮かんだのがこれだったんだ。憂と一生一緒にいられる為にはどうすればいいのかって……」
『朔夜……』
「今日この日を俺がどんなに待ち侘びていた事か……
言うならこの場所しかないと思ったんだ。俺達が出会ったこの図書室」
そう言って朔夜は図書室の中を見渡した
「ここに来られるのは本当に今日で最後だから……」
『本当に……いいの?』
震える声で俺は言った
「もう一度言うよ。俺と結婚して欲しい」
『俺、本当にダメ人間だし朔夜に迷惑ばっか掛けるよ』
「迷惑だなんて思わない」
『それに俺……』
「返事は?」
『ありがとう、朔夜』
朔夜にぎゅっと抱き着いて俺は深く頷いた
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