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Virtual Simulator of Novel Univers
文美が手を振ってその場を離れると、聖字はすぐに電話をかけた。
「……はい、どちら様で?」
「俺だ、セントマジシャン」
「フフ、随分と早いアポイントですね、そんなに大切なんですか? あのもうろく会社」
「……能書きはいらない、デュエルノベルだろ? どこに行けばいい?」
「さすが、ダークノベラーナンバーワン、話が早い。深夜1時に、これから言う場所に来てくれ……」
聖字は指定された場所に赴くと裏門へと向かった。裏門は開いていて、すぐ横に貫禄のある中年男性が立っていた。
「よく来てくれた、セントマジシャン。教授がお待ちかねだ」
――帝国電子工科大学―― 国内有数の研究施設を持つ理工大学だ。
案内されて大学構内を進むと大きな講堂が見えてきた。
講堂の中に入ると、大きなテーブルが置かれ、その左右に威圧感のある複数の老人が座っていた。どこかで見たことのある顔……それもそのはず、出版業界、文学界の重鎮達がそこに並んでいた。
「待っていたよ。今日のデュエルノベルの審査員として、出版各界の重鎮に集まってもらった。それにしても……よもや聖なる魔術師が、こんな若造だったとは、ハハハ」
「罠に嵌めたつもりだろうが残念、俺もヴィシュヌと一度対戦してみたかったんだ。お前がヴィシュヌか?」
「申し遅れたな、私はこの大学で電子工学の教授をしている藍野守太院という。私は違う、ヴィシュヌは……こいつだ」
彼の横には大型コンピューターが置かれていた。黒い筐体の中心にある緑色のLEDランプが、息づくように妖しく点滅を繰り返していた。
「ヴィシュヌViSNU――Virtual Simulator of Novel Univers、小説自動生成人工知能だ」
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