ViSNU

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「先生、おめでとうございます。デュエル(武闘)ランキング二位まで到達しましたね」 「ああ、完成が近づいてきた。こいつが完全体になれば、歯向かえる輩はいなくなる。出版社は淘汰され、我々が業界を牛耳ることになる。ただ、倒しておきたい奴があと一人だけいる」 「……それは誰ですか?」 「ランキング独占一位、無敗の孤狼(ころう)聖なる魔術師(セントマジシャン)。こいつに勝てば、業界を手中に収めたと言っても過言ではない」 「潰しますか?」 「まあ待て、それでは意味がない。あいつに勝ってこそ完成と呼べるものになる。しかしあいつをおびき出すにしても……正体不明、神出鬼没だ。何かエサをぶら下げる必要があるな」 「罠をかけますか?」 「あいつのニックネームはおそらく、パプロ社の古典ミステリー『聖魔術師』から取ったものだ。よほど好きなのだろう……そこに網をかけてみるか」 「祝杯を上げる日も近いですね」 「ああ、すべてはお前にかかっている。頼んだぞ、ヴィシュヌ」  暗闇の中で沈黙を保っていたヴィシュヌだったが、声をかけられた瞬間、目から一閃の光を放った。  ヴィシュヌ――それはインド神話に伝わる最高神。(あまね)く満たす者。
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