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審査員の一人が語り始めた。
「まずViSNUの作品、『ガラス細工の城』ですが、これは人間が非常に繊細なもので、ちょっとした刺激でガラガラと崩れていく、ガラス細工のように脆いものだということを物語の中で表現している。しかし最後に残る一本の芯、これが人間の本性であったということを語った素晴らしい作品でした」
隣にいた審査員が続いて語り始めた。
「そして聖なる魔術師の作品、『仮面の裏側』は王国を守る魔導士が世界を脅かす仮面の魔王と対峙する物語。魔王との正面対決をした際、その正体が明かされることになる。そこで人間と自分の本性を知ることになるという、興味深い作品でした」
「それでは、それぞれの作品の概要を理解したところで、ラストジャッジメントです。勝者と判断した小説の原稿を上に上げてください」
審査員は一斉に原稿を持った手を上げた。
「な、なに? そんなバカな!」
教授は急にうろたえた。審査員全員の上げた原稿は、まさしく聖なる魔術師のものであったからだ。
「ViSNUの原稿を貸せ!」
教授は原稿を手に取ると、パラパラと流し読みを始めた。
「これまで読んだことのない、すごい作品じゃないか! これが負けるなんて、ありえない!」
手に持っていた原稿をバサッと床に叩きつけた。
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