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「……たしかに素晴らしい作品だった。ただ聖なる魔術師の小説を読んで、ある事に気づいてしまった。彼の作品を読んだら、一瞬にして色褪せてしまったんだよ。この解説は……彼からしてもらったほうがいいかもしれない」
審査員は視線を移すと、チラリと聖字の方へ目くばせした。
聖字はコクンと頷いた。
「教授、まず聞きたいが、ViSNUはどのようなアルゴリズムで小説を描いたんだ?」
「それは……世界中の小説から、優秀と判断する言葉、文章、文脈を解析し、テーマに合わせて、総合的に判断して最適な物語を構成していく。だから絶対に負けるはずがない」
「そう、たしかにViSNUは優秀だった。優秀すぎた。なぜならほとんどの構成が、俺のこれまでの作品から抽出されたものだったからだ」
教授は愕然とした表情で立ち尽くした。
「それならば勝つのは簡単。過去の自分の作品を超える小説を書けばいい。仮面の裏側の正体、それは鏡に映った自分自身だったということだ」
「……以前からヴィシュヌの作品は読ませてもらっていた。その時、ものすごい違和感を感じたんだ。その正体を知りたかった、そして今日確信した、彼は自分の模倣であったということを」
「……これで勝敗は決しましたかね」
審査員の一人がポツリと呟いた。教授はそのまま、ガクリと膝を床につけた。
ジャッジはオロオロしながらも、コホンと一度咳払いをすると、大きな声で告げた。
「デュエルノベル、勝者、聖なる魔術師!」
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