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Saint Magician
「聖字君、聞きたいことがあるんだけど」
「なんだい文美?」
「友達がね、すごい感動するファンタジー小説が読みたいって言うんだけど、何かいいものない?」
「ファンタジー小説? それならこれかな」
聖字は図書室の本棚から一冊の本を取り出すと、ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」を文美に手渡した。
二人は高校の図書委員で幼馴染。老舗出版社オーナーの娘である文美の部屋には天井まで届く本棚があり、聖字はいつも文美の家で児童書を読ませてもらっていた。
「今日ひさしぶりにうちに来ない? 新刊のミステリー小説が入ったわよ。きっと聖字君も気に入ると思う」
「悪い、今日は家で宿題やらなきゃいけないから、また今度にするよ」
「残念、お父さんも会いたがってたわよ。二人で小説の話すると、止まらなくなるでしょ?」
「そうだね、行けそうな日を後でチャットするよ」
――今日は野暮用があってね、いいバイトがあるんだ――
聖字は帰宅するとすぐに部屋に籠もり、ノートPCを起動させた。
ブラウザを開き、幾層にも渡る暗号アドレスを辿っていき、行きついた先で自分のダークノベラーIDを打ち込んだ。
[Saint Magician]
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