Take Over Bid

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Take Over Bid

「あっと、文美にメッセージ送らないと」  スマートフォンの画面を覗くと、すでに文美から大量の着信メッセージが来ていたことに気づいた。  [相談したいことがあるの! すぐ連絡くれる?]  随分と慌てている様子なので、聖字はすぐに電話をかけることにした。 「もしもし文美? 僕だけど」 「聖字くん? 大変なことが起きているの。お父さんの会社が、うっ、うっ」 「文美? わかった、すぐ相談に乗る。駅前の公園で待ち合わせよう」  聖字は黒ジャンパーを羽織ると、すぐに公園へ駆け出していった。到着すると、顔を(うつむ)かせた文美がベンチに座っていた。   「何があったんだ?」 「お父さんの会社が大手IT企業から敵対的TOB? というのを受けていて、買収されそうなの」 「パプロ社が? なぜ?」 「わからない、でも撤退する条件を提示されているの。デュエルノベルって、知ってる?」 「デュエルノベル……聞いたことはあるよ」 「そこのメンバーのセントマジシャンという人を連れてこいって。でも私達、そんな人のこと知らないし、聖字くんなら詳しいんじゃないかと思って」  ――まさか俺を()めるために、わざわざ? そこまでして、なぜ?―― 「セントマジシャン? ああ、知ってる。チャットでたまたま仲良くなって、フレンド登録しているよ。デュエルノベルのトップランカーだね」 「本当? それでお願いしてほしいことがあるの! ヴィシュヌ? という人と対決して勝ったら、買収は諦めるって言われているの。そのマジシャンさんに助けてもらえないかな?」 「ヴィシュヌ、なるほどねぇ。うん、わかった、相談してみるよ。それで……どこに連絡すればいい?」  聖字が以前から気になっていたセカンドランカー、彼との対決……これは願ってもないことだと、内心ではニヤッとほくそ笑んでいた。 「連絡先はお父さんから聞いてる。この電話番号」 「わかった、後は僕のほうでマジシャンさんにチャットで相談しておくから、先に帰っていて」 「まかせちゃっていいの?」 「大丈夫だよ、えーと小説の事で聞きたいこともあったし」 「ありがとう、じゃあまた明日ね」
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