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「今日の講義で取り扱った作品のキーワード『かくしごと』。これをテーマに講義の内容も踏まえて、短編作品を仕上げて来てください。課題は次回の授業で提出してもらいます。では、今日はここまで」
先生の合図とともに講義室は一気に緩んだ空気に包まれた。あちこちで「課題だるー」「この後、どっか寄ってかない?」「お前、今日これで終わり?」などという学生たちの会話が室内を満たした。
帰り支度を済ませた彼らは一斉に講義室の前と後にある出口殺到する。さながらラッシュアワーのホームのようだ。
僕はその様子をレジュメをファイルにしまいながら眺めていた。
今さっき終わったこの授業──創作表現の授業は僕のお気に入りの授業だ。教養科目で単位のために適当に取った授業だが、これが意外に面白かった。
元々、読書が好きだったが、この授業で「書く」ことの楽しさを知りさらに読書の幅が広がったと思う。それに作家になりたいという夢もできた。
出口が空いたのを見計らって僕も帰り支度をはじめた。
腕時計の針は午後五時前を指していた。今日はこれで終わりであとは帰るだけだ。
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