ふつうの日々

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 言ったら笑われると思って友達はおろか家族にすら話してない。立派な「かくしごと」だ。  ストーリーはこうだ。  主人公は作家を目指していて、なんとかデビューするが恥ずかしくて周りには隠している。そして何度もバレそうになりながらも上手く隠し通す──。  いいじゃないか! それに「隠し事」と「書く仕事」もかけているし自分にしてはナイスアイデアじゃないか? これにしよう。  そう考えた途端、はたと思い出した。  やっぱりダメだ。「隠し事」と「書く仕事」をかけるなんてきっとみんな思いつくはず。  それに似た漫画があった気がする。漫画家が娘に自分の仕事を隠すって話のやつが。このまま書いたらただのパクリじゃないか。  それに作家を志すものとしてはもっと奇想天外で、過去にない斬新なストーリーを考えなければいけない。  じゃあ、ほかに何がある?  隠し事と言えば……。  ちょうど赤信号で止まった僕はハンドルから右手を離して指を折った。  不倫、浮気、犯罪歴、性的指向、借金……うーん。
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