一冊目(普通が変わる日)

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その日から美浦は俺を気に入ったらしく、小休憩の読書を邪魔しにきたり昼食に誘いにきたりを繰り返すようになった。 「今日はデートの約束が無いから」…と放課後に連れ回される事もあった。 正直、読書の時間が減るので付き合いたくはなかったが断ることが億劫でなぁなぁに付き合うことが多かった。大体は美浦の彼女(達)自慢や交友関係の愚痴。学校生活の不満の話を聞かされる。読書をしながら生返事をする 話を聞かされるうちに分かったことが幾つかある とりわけ驚いたのは(とても話しやすい性格)だということ。見た目のチャラさやらで威圧的な性格なのだと思い込んでいたがそんな事はなくフランクな話し方だが協調性がある。 成績の方も並の並はあるらしくコレも真っ当な不良と言うわけでも無いらしい。 女好きのスケコマシと名高いがフランクな性格のせいか告白されがちで上手く断れない性格らしい。優柔不断のようで好意を持たれると相手が気になりたまらなくなるので世間体構わず付き合うのだと言う。怖いところはそれを彼女側が許している所だ。他人の恋愛観に因縁をつける気は無いが理解し難い 他の女がいる事を許す女も分からないが、断れないからと言って複数人と付き合う美浦の感覚は嫌悪感も覚える ただ、その事以外は特に悪いところが無いのだ。変な奴つ… 今日は俺ん家の最寄り駅前まで着いてきてひたすら喋りかけられている。不意に読んでいた本を奪われた 「おい!何すんだ!!」 「いや。いつもコレ読んでるなと思って?面白いの?」と奪った物をひらひらさせながら嫌味な顔をしている やはりコイツは嫌いだ。俺の楽しみを邪魔して良いモノは居ない。 それに、その本は6巻目だから昨日読んでいた5巻とは違うモノだ イライラしながら「面白いと思うから読んでいるんだろ…」と答える 取り返そうとするがぴょいと本を上に翳せばギリギリ届かない そして本を興味深そうに見つめる美浦 「興味があるならコレをやるから読んでみろよ」鞄から取り出した読み終わった5巻を差し出す どうせ読まないだようがそっちを返してほしい。それだけの理由で本を渡した 嫌味として中途半端な巻数を渡してやったのに、意外にも嬉しそうにする美浦。妙な気持ちになった
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