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放課後。数週間前だったらだらだらと残っていた教室から速やかに抜け出す。そのまま向かった先は1年2組。なんだかんだで、少年との交流は続いていた。俺が何をしたところで変わらないのはわかっていても、放っておくことが出来なかった。
1年生の階に着くと、雪崩のように人が出てきた。波が収まるのを待ってから2組に行く。教室の中には、少年と先生。なにか話しているようだった。んー、これは。今日は帰った方がいい感じ?
盗み聞きするのも悪いと思い、玄関の方へ向かおうと歩き出す。と、
「どっちみち、書類が必要なのは確かなんだから、分かったら言ってくれよ。」
「……はい。」
「じゃあ、……頑張れな。」
その言葉とともに、先生が教室から出てきた。俺に一瞬目を向けたが、何も言わずに行ってしまった。
怒られていたと言うよりは、注意されているというか…。首、突っ込まない方がいいんだろうな。なのに、
「……よぉ。」
言いながら教室に入り少年に歩み寄る。
「先輩……?」
驚いたように振り向いた少年の潤んだ目を見たら、余計なことだととわかってても、つい聞いてしまう。
「なんかあったのか?」
首を横におおきく振りながらも、目からは涙が溢れ出す少年の頭に、そっと手を置く。
「言いたくないなら言わなくていいけど、言った方が楽になるなら言えよ。」
こくこくと今度は縦に頭を振った少年は、そのまま泣き出した。涙と共に時折溢れる言葉は、上手く聞き取れ無くて、でも、相槌をうつ。
「落ち着いた?」
「はい。ありがとう、ございます。」
しばらくして、少年は顔を上げた。涙でぐしょぐしょの顔で、ありがとう、と笑う
「帰ろっか。それとも、どっか寄り道でもする?」
「…はい!」
「じゃ、とりあえず学校出ようぜ。」
急いで荷物をまとめる少年を見ながら、どこがいいか考える。現実逃避、か。
「……どこ行きたい?」
「どこでもいいですよ。」
「……駅の方行くか。」
「了解です。」
考えたところで、結局わからなかった。駅の方ならなんかあるかなぁ、なんて言う浅はかな考えで何度駅に行ったことか…。毎回嬉しそうな少年に、少し救われる。
「駅でしたいことある?」
「……高校生っぽいこと?」
「うん。ごめん、言っといてだけど、俺もよくわかんない。」
「大丈夫です。」
「ありがと。」
「……あ、文房具買いたいです。」
「行くか。たしかにショッピングモールの中に入ってたよな…。」
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