放課後

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数ヶ月後、落し物箱の筆箱は、そのままだった。少年とも会わないまま。最初は気まづくて、1年生の居そうなところを避けてた。部活も終わって、無事推薦で大学への入学内定も決まったところで、どうしても気になって教室に向かったけど、誰もいなかった。あんなに一緒に居たくせに名前すら聞いてなかった事を悔やんだ。席替えをしたらしく、少年の席の場所は、女の子の席になってた。 部活の送別会の時、1年2組の子がいて、いじめられてる小柄な男の子の名前を聞いてみた。少し考え込んでから、あっ、と、叫んだそいつは、そいつ親の離婚で引っ越しましたよ。とさらりと言った。引越し先は知らないらしい。多分、先生以外誰も知りませんよ。と笑いながら言う姿を、ぼーっと眺めた。先輩仲良かったんですね。なんて、驚いたように聞かれて、名前も知らないけどな。と返す。まじすか?じゃあなんで気にしてるんすか?相変わらず笑いながら言うそいつの質問には答えず、名前を聞く。確か、と言いながら、そいつは言った。 「佐藤 春です。」
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