家族の証

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初めて人を殺してしまった。 夜の公園――目の前で横たわる男は、頭から血を流して死んでいる。 もちろん、殺す気などなかった。私も人の子だ。 真面目さだけで生きてきた。 妻と娘を幸せにすることだけが、私の生きがいだった。 およそ五十年の人生。突然の出来事。 なぜ、こんな事になってしまったのだろう。 十分ほど前だった。仕事終わりの帰り道。 いつもとは違うコースで帰ることにした私は、ウォーキングがてら、この大きな公園を横切って帰っていた。 時刻は夜の九時。誰もいない公園。 冬の空気におおわれた静けさに、白い吐息を重ねながら歩いた。 寒さに体をブルッと震わせた。 用を足そうと思い、トイレに向かった。 ――すると、その時だった。 突然、その男が現れた。 手にはナイフを持っていた。
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