第2話 上司こわい

1/1

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

第2話 上司こわい

 30分後。  2人は上司・芽里(めり)の大きな机の前に並んで立っていた。もとい。立たされていた。 「な・ん・な・の・よ、こ・れ・は?」  静かだが迫力のある声が言う。指さす画面には、先ほど送った報告書が大写しになっていた。 「あの、この間の、出張報告です」 「それはわかってます。問題は内容よ。なにこの『のはずが、予定が変わって』って? 報告書に、のはずが、なんて、おかしいでしょ?」 「あ、それは彼が…」 「おい!」  小競り合いになりそうなところを咳払いで制し、芽里はさらに先を読み上げる。 「それから! 修正結果と対応後の状況!  『仲直りできてよかった』『がんばった』って、感想文じゃないんだから。  あと、空白埋めるために無駄な改行しない!」 「そのへんは、こいつが…」 「あっ! シュウだって、それでいいって言ったじゃない!?」  ぐぬぅ、っと再び一触即発になるのを、芽里は、揉めない! 聞きなさい! と圧倒的な声量で制し、2人はびくりと体を竦ませた。         ***  そんなにがみがみ言わないでくださいよぉ、パワハラですう、と言ったら、即座に、地上の常識を持ち込むな! と一喝された。こわい(涙)  報告書なんて、必要か? それこそ地上の常識じゃねーかよ、と呟いたら、「何?」とすごまれ、慌てて、いえ、なんでも、と首を振った。肝が冷えた…。 「…まあいいわ、今から会議があるから、一緒に出てちょうだい。ちゃんとメモを取って勉強するのよ? 先週の魂の削減状況データの検証と、あと、魂の増減に関する新システム導入提案の採決もあるからね」  行くわよ、という声とともに、上司がさっさと部屋を出て行く。慌ててばたばたと追いかけた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加