一緒にごはんを

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「伊坂くんてお酒ダメなの?」 「はあ、すいません」  そう言いながらも差し出されたままのコップに姉さんがビールを注ぐ。まだ一杯目のはずだが、すでに伊坂の顔は赤い。これが白くなってきたら本気で危ないからほどほどで止めようと思ってはいる。俺の家族が酒好きなことは知っているから、頑張っているんだろうけれど。 「無理に付き合わなくていいから。うちの家族に付き合ってたらお前なんか大変なことになるぞ」 「そうそう、うちはみんな酒豪だからねえ」 「お母さんはそんなことありません」 「いとこの結婚式で一升瓶を空けた人がよく言うよ」  うちは家系なのか両親とも、そして姉さんも俺もアルコールには強い。まともに付き合っていたら普通の人でも悪酔いするだろう。伊坂なんてもってのほかだ。 「だってさ。だからお父さん、その日本酒は私がもらうねー」  父さんがひそかに伊坂に差し出そうとしていた日本酒を姉さんが引き取る。わかりにくいなりに残念そうな父さんを察してか、伊坂がコップのビールを飲み干すと、父さんに向かって差し出した。 「おい、お前大丈夫かよ」 「いただきます」 「……無理はするなよ」  言いながらもどことなく嬉しそうに伊坂の差し出したコップに日本酒を注ぐ。コップの縁ぎりぎりまで注がれたそれに口をつけると、伊坂はぐいっと呷った。 「やるなあ伊坂くん」 「お前本当に大丈夫かよ」 「大丈夫……れす」  すでに危なそうな返事をする伊坂の隣でため息をつくと、今度こそ父さんが差し出していた日本酒を遠ざけた。
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