1827人が本棚に入れています
本棚に追加
/287ページ
これで師匠とお別れだと思うと、胸に迫るものがあったはずなのに、神様のせいでしんみりした空気がぶち壊しだ。
たしかに、彼はアイリーシャを利用していたのかもしれない。多数の犠牲を出して、自分の野望を果たそうとしたのも否定できない。
――でも。
十年もの間、彼に師事して、アイリーシャが得たものもたしかに多かったのだ。たしかに彼は過ちを犯したし、それは償うべきものであるけれど。
「それじゃあ、まあ、そういうことで。あ、また違う魔神が来るかもしれないから、その時はまた力を借りることになると思うよ」
「え? 今回だけじゃないの?」
「今回だけのはずないじゃん。魔神が一柱しかいないって誰が言った?」
「……うそぉ……」
最期に飛んでもない爆弾を落とすなり、ミカルを背中に乗せた神様は、煙のように消えてしまった。
(……でもまあ、しかたないわよね)
一度引き受けた役目を勢いよく放り出すわけにもいかないだろう。そんなの、アイリーシャの矜持が許さない。
(あ……次の世代の戦乙女を導くって……ひょっとしたら)
最初のコメントを投稿しよう!