いきなり殺されかけるとか

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(まったく……今回の人生でも、こんなにも人に囲まれるとは思ってもいなかったわよ……! モブキャラにしてくれって言ったはずなのにね!)  可憐な容姿に似合わない毒舌を心の中で吐き出して、そのまま庭園へと続く階段を下りていく。  途中ですれ違ったのは、王宮の使用人だ。けれど、アイリーシャには見向きもせず、そのまままっすぐに歩いていく。 ("隠密"スキル最高……!)  ちらりと振り返り、まったく存在に気付かれていないことを確信してから、心の中で右手を突き上げる。  やはり、"隠密"スキルを使っていると、誰の目にも止まりにくくなるようだ。ほっとして息を吐き出す。 ("聖槍の戦乙女"の世界だから、スキルが存在するのも知っていたし、がっつり修行してきたからそうそう見抜かれないとは思っていたけれど)  実のところ、シュタッドミュラー公爵家の娘であるアイリーシャには、前世の記憶がある。 しかも、前世でもかなりのお嬢様だった。前世の名は、天花寺愛美。旧華族の流れをくむ日本国内でも有数の富豪、天花寺家の一人娘として生きていた記憶がある。
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