十年前の少年

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十年前の少年

「あー、よかった」  不意に気の抜けるような声が天井から降って来た。 「はい?」  声の方を見上げれば、ふよふよと白い猫が浮かんでいる。 「間に合ったよ、アイリーシャ。君が、そう思ってくれないとだめだったんだよねぇ……」  とぼけた表情でテーブルの上に降りた神は、ひょいと後ろ足で伸びあがった。そして、肩に手をかける。 「君が、この世界を守りたいと――三百年後に続くためじゃなく、今を守りたいと思った時じゃないとだめだったんだよ。聖槍の力は引き出せない」 「神様なんだから、そのくらいひょいっとできないの?」  というか、神様なんだから他の世界から侵略してくる魔神くらい簡単に退治できるだろうに。わざわざこの世界の人間であるアイリーシャにやらせるだなんてどういうことだ。 (まあ三百年後も同じことをやっているわけだけれど……) 「それは、我にもどうにもできないよねぇ……世界の理を壊しちゃうし」  しれっとした顔で神様は言う。  世界の理って、神様にもどうにもできないのか。
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