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CMデビュー
天葬社の会議室で、社長の園馬とCMディレクターの山内が、新しいCMの完成品を見終わった。
園馬が溜息をついた。
「私はできる事だけはしました。本当にこれでいいんですね」山内が確認する。
「しょうがないだろう、名誉会長がどうしてもと言って聞かないんだから」
「しかし、葬式屋のCMにロックのBGMを流すなんて前代未聞だな」
頭を抱え込む園馬。
「しかも、あのヒョットコのヘンテって奴が創った曲。流石に酷かっなあ。うちの子供でももっとマシな歌作りますよ」
呆れた様子で山内が嘆く。。
「確かに酷かったな、特にあの歌詞。多分、アメリカ映画の天国から来たチャンピオンとツェッペリンの天国への階段がごっちゃに成って創ったんだろう」
お手上げだと言う表情の園馬。
山内の前にある書類から一枚の用紙を抜き取る。
そこには、ヘンテが書いた歌詞がある。
天国から来たチャップマン(天葬社編)
作詞作曲 ひょっとこ変態性低気圧
死んじゃいけない人がいる
死んでも 死んでも 死にきにれない
苦しまずに逝きたいものさ
ニコっと笑って ポクって逝って
ニコっと笑って ポクって逝って
天国への導き人 チャップマンがやってきた
みんなでお迎えしなければ
天葬社〜
「演奏も酷かったな〜、殆ど打ち込みで入れ替えましたけど」
「あれでもCD一枚出してるんだぞ」
「怖いもの見たさで、聞いてみたい気もしますな」
「兎に角、ワンクールだけこれで行こう」
「社長、私の経歴にこの作品は入れませんので、ヨロシク」
二人は下を向いたまま、会議室を後にした。
一ヶ月後、一回目のCMが放送された。
もの凄い反響があった。
逆の意味でである。
クレームの電話やメールが止まらない。
葬式屋のCMとは思えない。
ニコっと笑って ポクっと潰れろと言われた。
更にいけなかったのは、ひょっとこ&ドザエモンブラザーズの名前をクレジットした事である。
ドザエモンがいけなかった。
死者を冒涜しているとまで言われた。
当然、一日でCMはお蔵入りとなる。
記念すべき創立50周年に、売上化2割の30億円も減少する。
社長の園馬は役員報酬の5割カットを決め、名誉会長の園馬正子は退くことになった。
何とも後味の悪い結果となったがヘンテは挫けず、後にこう言った。
「俺は30億の男だ」
次回 [名付け親]
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