9人が本棚に入れています
本棚に追加
こぼれ話
①ヘンテのアンチエイジング
「どうして芸能人はあんなに若々しく見えるんだろう」
不思議に思ったヘンテはプラさん尋ねる。
「あの人達は何時も、誰かに見られているという緊張感が顔を作ってんじゃねぇか」
「なるほど、いつも誰かに見られてる緊張感ねぇ。俺も多くの人に何時も見られれば若々しくなるのかな」
「かもな」この回答がよくなかった。
翌日、ヘンテが現れた。
髪型をスーパーサイヤ人に背中に薪を背負って、右手にアイロン、左手に野菜ジュースを持って現れた。
「今日は歩いている間、ず〜っと注目され続けた。これで若々しくなれるかな」
②キラキラネーム
ヘンテは思う。よく聞くキラキラネームの事だ。
人間が年を取ることを忘れ、赤ちゃんのイメージで名前を命名する。凡庸を嫌うのだろう。
だが、世界で闘い活躍した人と言えば、
野茂英雄、イチロー、松井秀喜、伊達公子、中村俊輔、錦織圭、南野拓実、久保建英、浅田真央大谷翔平、等々皆あり触れた名前だ。
特別な名前を付けても、特別な人物になれるという事ではない。
名前で才能は買えないのだ。
ふと思った。
私の芸名は、ひょっとこ変態性低気圧だ。
③カンタのオーラ
カンタとインタが店の近くの空き地でキャッチボールをしている。
「やっぱリ様になってるな、キャッチボールしただけでも野球の経験者だって分かるよ」
そう、カンタは高校生の時まで野球部に席を置いた。
弱小野球部で、周りの高校からライパッチ野球軍と呼ばれた。
ライトで8番、昔は下手くその定位置だった。ヘンテが現役の時、公式戦の試合で勝った事が無かった。
甲子園に出場する選手が羨ましかった。
オーラを感じた。
今インタが私に感じたのは何なのか、これがオーラの正体か。
だとしたら、最近の私にはオーラはあるのか?
返すボールに力を込めて投げた。
④音楽のパワー
「ねぇインタ、音楽って世界を変えられるの」
突然セニョの質問に戸惑った。
「俺には難しい質問だな」
「ビートルズやマイケル・ジャクソンは世界を変えたんじゃないの」
「確かに音楽の世界には影響を与えたな。でも、あのジョン・レノンやマイケル・ジャクソンでさえ、平和を唱えても戦争は無くならないし、ずっとテロは続いている」
「音楽さえ無力って事?」
「それはどうかな、人には平和を望む気持ちが消えることはない。その事を世界中の人が共有できる。そのアイテムの1つとして歌があるんじゃないか」
「今日のインタカッコいい」
「こんなオッサンに惚れるなよ」
セニョはインタのズボンのチャックが、全開になっているを教える事をやめた。
⑤プラさんの憂鬱
最近、諸に運動不足を感じるプラさんはウォーキングを始めた。
近くの公園を3周、距離にして3km程歩く事にした。
途中に街を見下ろせる展望台が有り、そこでストレッチをした。
軽く体を動かしていると、青い帽子を被った60代と思しき老人が鋭い視線を向け、直ぐに立ち去って行った。
少し気分を害したが気にせずその日を終えた。
しかし次の日も、その次の日も老人が睨みつけては立ち去って行く。
私は、気にしない様に努め、その後もウォーキングを続けた。
1週間程すると、あの老人の姿を見かけなくなった。
その理由がわかった。
ウォーキングをしている時に、時々挨拶をする様になった常連の人がいる。
その人にそれとなく聞いてみることにした。
「最近、青い帽子を被ったお爺さん、見かけなくなリましたね」
すると、言い難そうに話してくれた。
理由を聞いてショックを受けた。
何と、あのお爺さんは、もう何年もあの展望台で、同じ時間に体操をするのが日課になってたそうだ。
今は、時間を替えて公園に現れるそうだ。
要するに私は、彼の何年も続ける日常を壊していたのだ。
私にはなんの責任もないとはいえ、憂鬱な気持ちになった。
人は知らない内に、誰かを傷つけているのだ。
私は、ウォーキングを止めてしまった。
あの、お爺さんの日常が取り戻せる事を願っている。
⑥セニョとイナカップリー
セニョが店に入ってくる。
イナカップリーが一人で開店の準備をしている。
「アレッ、インタはいないの」
「ハイ、昨日遅くなって、深酒で少し遅くなるとの事です」
「ねぇイナちゃん、ソロソロ敬語止めてくんない、オッサンに敬語で喋られると調子狂っちゃうんだけど」
「スミマセン、でも私は新参者ですし、性格的に難しいんです」
「性格ならしょうがないけど早く慣れてね」
「分かりました。頑張ります」
コップを丁寧に拭く、暫く沈黙が続いたあと、イナカップは不思議に思っている疑問を尋ねてみた。
「セニョさん。あなたは何故、私達の様な年配者と行動を取るんですか」
「どうしてそんな事聞くの。じゃあ逆に聞くけど、私がもしビートタケシさんや明石家サンマさんと一緒にいたら、そんな質問する」
「えっ」
「きっと誰もそんな質問しないでしょ」
「確かにそうですね」
「分かってもらえた。自分にとって、大切な人と一緒に何かをするって楽しいことよ、年齢は関係ない。イナちゃん、あなたもその一人よ」
イナカップリーはこの娘の夢を叶える為には、最大限の努力を惜しまないと心に誓った。
⑦血液型占い
「ねぇインタ、何か為になる話をして」
いきなりのセニョの質問に、インタはボトルを拭う手を止めて、どういう事だと聞き返す。
「今日の朝のテレビの占いで、山羊座の人は、新しい知識を手に入れるでしょうって言ってた」
セニョの誕生日は12月31日だ。大晦日生まれは損をすると何時も言ってる。
30日に16歳で、31日に17歳、翌日1日は今年18歳になり、いっぺんに、年を取ると嘆いている。
なるほど、いいえて妙だ。
「何だセニョ、お前占い信じるのか」
ヘンテは今時の若者も信じるのかと思った。
「別に信じてるって訳じゃ無いけど、気にはなる」
「占いなんて迷信だ。覚えておきなさい」
「何よそれ。じゃいいわ、今度は血液型占い。ヘンテは絶対にAB型でしょう」
「絶対とはどういう意味だ」ヘンテが聞き返す。
「だってAB型は奇人変人が多いって皆んな言ってるもん。あんなヘンテコリンの歌を創っているのはAB型の証拠だよ」
「ヘンテコリンとはなんだ、特別なとか、一風変わったとか、言い方があるだろう」ヘンテが釘を刺す。
「いいかセニョ、仮に両親がAB型とÒ型だとしよう。生まれてくる子はA型かB型しか生まれない。だとしたら家族全員違う性格となる。そんなバカな事があるか」
インタが諭すように言う。
「確かにそうね、でも為になる知識を得たわ。占いは当たっている事になるわね」
「お前には敵わねえな」インタが嘆く。
「それで結局、ヘンテは何型なの」
「俺か、俺の血液型はAB型だ」
店の中が静まりかえったあと大笑いになった、
当たるも八卦当たらぬも八卦である。
次回 [ワードチョイス カラオケ]
最初のコメントを投稿しよう!