『 FAKE 』

3/10
前へ
/10ページ
次へ
3 「どちらが……って、はっきりいえないけど。   私が酔いすぎて会がお開きになった後立てなくて、そしたら 桑山くんが酔いが醒めるまでずっとついててくれて……」  要約するとその後彼女の家まで送って行ったらしい。  チッ、まったく。  圭介のほうは十分下心があったんだろうなぁ~って、 見てたわけじゃないけどその話を聞いて私はそう思った。  だって彼女の友達だって何人かいたんだよ。  下心もないのにその日初めて顔合わせした相手を介抱し 自宅まで送って行くだなんて。  私は食い下がるように熱烈にアプローチしてきた圭介の 当時の私への積極的な行動を思った。 さもありなん!! 「いいよ、わかった。  圭介はあなたに譲ってあげるよって、今ここですぐに返事できるようなことでもないよね?  だけどあなたたちが本気で想いあっているのに、先に付き合っている からってどこまでも邪魔をするような野暮な人間じゃないから、あたし。  今言ったことが本当のことなら相思相愛を主張するあなたに 不安材料はないってことになるのかな?! ……となるとぉ、急がなくてもそのうち結論の出そうな話だし 泣かなくていいわよ」  と、その女に慰めともとれるような話をし、私は立ち上がった。  スタッフがオーダー取りに来る前に話がついてしまい、流石に そのまま気まずさの中でお茶なんて飲んでられないと思い、私は足早に 店を出た。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加