prologue

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“光と影があるように、この世界の万物は対を成して、うまく均衡を保ちながら存在する。 そのバランスが崩れたらどうなるかなど誰にも想像がつかないし、誰もそう簡単に崩れるとも思っていない。 突けば容易(たやす)く瓦解するほど、脆く危ういものなのに──。 この国には、相反する二大組織がある。 一つは、人々の罪科を浄化する救済者が属する、白檀(びゃくだん)。 もう一つは、人ごと罪科を消却する断罪者が属する、黒檀(こくだん)。 人々は救済者を崇拝し、断罪者を厭忌(えんき)した。 彼等なくして成り立たない安寧と知りながらも、冷酷だと思わせる断罪者の職務は、平和ボケした民には到底理解できるはずがなかった。 断罪者はこの世界でただ唯一、一身に澱みを引き受け続ける。 命を賭す苦しみさえも理解されないまま、今日も一つ二つと、哀しい灯が消えてゆくのだ。          ──タイムレコーダー手記より”
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