0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
prologue
“光と影があるように、この世界の万物は対を成して、うまく均衡を保ちながら存在する。
そのバランスが崩れたらどうなるかなど誰にも想像がつかないし、誰もそう簡単に崩れるとも思っていない。
突けば容易く瓦解するほど、脆く危ういものなのに──。
この国には、相反する二大組織がある。
一つは、人々の罪科を浄化する救済者が属する、白檀。
もう一つは、人ごと罪科を消却する断罪者が属する、黒檀。
人々は救済者を崇拝し、断罪者を厭忌した。
彼等なくして成り立たない安寧と知りながらも、冷酷だと思わせる断罪者の職務は、平和ボケした民には到底理解できるはずがなかった。
断罪者はこの世界でただ唯一、一身に澱みを引き受け続ける。
命を賭す苦しみさえも理解されないまま、今日も一つ二つと、哀しい灯が消えてゆくのだ。
──タイムレコーダー手記より”
最初のコメントを投稿しよう!