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額を拭い終わると、珍妙なキャラがタオルに描かれているのが目に入った。
「……なにこれ、海藻?」
「あはは、違いますよ! 確かにもじゃもじゃしてますけど。モンスターです。キモ可愛い、ってやつですね。最近流行ってるんですよ?」
「ふうん。全然わからんな」
眉を顰めてそのキモ可愛いらしいキャラクターを見ている間も、ずっと夕里の視線を感じていた。二秒ほど目を合わせてから、「じゃあ行くか」と静かに言う。
嬉しそうに頷く夕里と自転車置き場に向かおうとすると、ガシッと部活仲間に肩を組まれた。
「相変わらずラブラブだなー、お前ら」
「付き合ってんの?」
からかう言葉にもうパターンがなくなってきたな、と思いつつ、汗臭いので「やめろよ」と俺は部活仲間の腕を振り払う。
「冷たいねー、古夜は。なぁ? 夕里ちゃん」
「いいんです」
夕里は、そう言って俺の前に立つと、少しだけ歯を見せて笑ってみせた。
「これでも先輩、デレデレなんですよ」
えいっ、と背伸びして右手で俺の横髪を上げる夕里。
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