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「え? なになに?」
「うわ、耳が真っ赤じゃん」
「マジかよ、古夜」
「ちげーよ! 暑いからだよ!」
大声を出すと、わいわい盛り上がっていたのが一気にシンとした。みんな俺の顔を見ている。
「……あ」
やばい、珍しく怒ってしまった。部活中よりも声張ってしまった。ごめん、って言うべきなのか、これ。いやでも、本当に違うし。
なんて一瞬のうちに悶々としていると、にこっと夕里が許すように笑う。
「行きましょ、先輩」
見上げてくる夕里の顔を、何故かまともに見れなかった。
「……あのさ、俺のどこが好きなの」
隣でずっと幸せそうに喋っている夕里に、ふと尋ねてみた。俺は下手な相槌しか出来ないのに、なんで満足しているんだろう。
唸る夕里。
しばらくの間、二人で淡いオレンジ色の空を眺めながら自転車を押していた。
「夜みたいなとこです」
「は?」
間髪入れずに聞き返してしまった。
そんな俺を意にも介さず、夕里は顎に手を当てたまま続きを話す。
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