あの子は夕方みたい

7/11
前へ
/11ページ
次へ
「先輩、賭けをしましょう」  いつも別れるところ。  工事中の看板が立てられた橋の前。  自転車のスタンドを下げた夕里が、振り返って俺を見て、にこっと笑う。 「は?」 「この危ない橋を渡り切れたら、付き合ってもいいことにします」  言葉を理解する前に、夕里が走り出した。 「……やめろよっ、オイ!」  あまりに迷いなく渡っていく夕里を、自転車を投げ捨てて追いかける。  たった数十メートルの橋を、全速力で駆けていく俺たち。  コンクリートで出来ているから、ミシミシ音を立てるなんてこともなかったけれど。いつの間にか立っていた看板の効果は抜群で。渡り切った時には、心臓が胸をつき破って出てくるんじゃないかと思うくらい、バクバクと鳴り続けていた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加