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「先輩、賭けをしましょう」
いつも別れるところ。
工事中の看板が立てられた橋の前。
自転車のスタンドを下げた夕里が、振り返って俺を見て、にこっと笑う。
「は?」
「この危ない橋を渡り切れたら、付き合ってもいいことにします」
言葉を理解する前に、夕里が走り出した。
「……やめろよっ、オイ!」
あまりに迷いなく渡っていく夕里を、自転車を投げ捨てて追いかける。
たった数十メートルの橋を、全速力で駆けていく俺たち。
コンクリートで出来ているから、ミシミシ音を立てるなんてこともなかったけれど。いつの間にか立っていた看板の効果は抜群で。渡り切った時には、心臓が胸をつき破って出てくるんじゃないかと思うくらい、バクバクと鳴り続けていた。
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