あの子は夕方みたい

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「さすが、足速いですね、先輩」 「何してんだよっ!」  へらっ、と笑う夕里を、膝に手をつけながら怒鳴る。  汗が止まらない。こんな距離、どうってことないはずなのに。 「楽しかったですか?」 「はぁ?」  噛み合わない会話をする夕里。  いつ、どこで頭を打ってきたんだ、こいつは。 「ね、先輩。一度くらい、どうってことないんですよ」 「……だから何言って」  ゆっくりと歩み寄ってきて、夕里は、息を整える俺を上から覗き込む。 「試しにキスしてみませんか?」  心臓が、口から飛び出そうだった。
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