あの子は夕方みたい

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 思わず尻もちをついてしまった俺に、夕里は躊躇なく覆いかぶさってきた。    そのままゆっくり、唇を重ねる。 「ほら、何にも変わらないでしょ?」  五センチ程の距離で、俺の目を見て笑う。  その可愛らしい表情(かお)に、釘付けになってしまった。  夕陽が似合う、誰よりも、そばで見ておきたい表情(かお)に。  ――そんなことが言いたかったのか。  壊れるかもしれない橋を、駆けてまで。  くす、と俺は笑った。  見事に証明されたよ、と。 「……もう戻れなくなったじゃねーか」  渡ってきた橋を見て、俺は言う。また渡れば良いじゃん、なんて俺の気持ちを考えずに言うことを、夕里はしなかった。  橋を渡る前の道に、どうやって行けばいいのか分からない。  それでも俺たちは危機感がなかった。 「いっそのこと、夜が明けるまでここで二人で過ごしますか」 「風邪引くだろ、バカ」  今度は、俺の方からキスしてやった。  不意打ちに、夕里は顔を真っ赤にし、にへら、と笑って両手で口を隠して座り込んだ。  俺は体勢を起こし、そんな夕里の顔を改めて見つめる。
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