第4話

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第4話

ある秋の日、 私は彼に呼ばれて一緒に出掛けることにした。 いわゆるデートのような気分は感じなかった。 図書館で勉強するだけの予定だったからだ。 彼は特に不得意な科目はなかったと思うけれど、なぜだろうか。 急に私と一緒に勉強したいなんて不思議だったんだ。 でも、私はどこか彼に安心感を抱いていた。 お互いに方程式の問題を教え合って、 時間を消化していった。 いつのまにか夕方になっていたのは気づかなかったんだ。 帰り道に、私は一軒の店に足を止めた。 それは結婚式場で、 正面のウインドウには 純白のウエディングドレスが飾られていた。 「……きれい」 彼も足を止めてくれて、一緒にドレスを眺めていた。 その時ばかりは、デートのときめきを感じていたのは秘密だよ。 彼は緊張しながら、言ったんだ。 「君がこれを着るのを見てみたい。 もし、大学過ぎても、お互いに意中の人が居なかったら……」 ……一緒に着よう、早口に言った彼の言葉はとても嬉しかった。 いつか、そんな日が私にくるのだろうか……。
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