第5話

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あれから一週間程経ったある日、 私は図書館に居た。 気になる本を取り、パラパラとめくっては 書架に戻していく。 次に手に取ったのは心理学の本だった。 性格について書いてある本で、 イラストが多くて読みやすいな、 そんな印象をもった。 私が目を瞠ったのは、次の一文だった。 <社会心理学における 嘘 の研究> 大学の教授によるレポートが 掲載されていたのだ。 私はつい夢中になり、その場に立ったまま 全文を読みだした。 … …… ………そして、ある可能性に思い当ったんだ。 彼は、他人の嘘が分かるんだ。 相手の考えていることも重みのない ただの台詞も分かってしまうから、 他人と距離を置きたがる。 そして、つい意地を張って喧嘩に発展してしまうんだ。 それは残酷だなって思う。 私にできることはあったんだと思うけれど、思いつかなかった……。 なにも考えることが出来なくて、 ごめんなさい。 もう、心の中で謝るしかできなかった。 お互い、大学は別の道に進むことに なったんだ。
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