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02
ちょっと一服
~side,K~
「なら、とりあえずどうするか決まったら連絡して。」
「わかりました。」
返事をして、頭を下げて店をでる。
近くのパーキングに停めてた車に乗って、タバコに火をつけた。
ーー面倒くせぇ…
ここ数日、何件かのダーツバーを廻って、何人もの人間がうちの店に来た。
みんな話すのはあるひとつの店の話で、それによってみんなが揺れてる。
面倒くせぇーー
「俺はこういうキャラだからね。仕事の話には向かないからお前が行ってきてよ。」
またどこかの女と電話しながら笑うユキの顔が浮かぶ。
おかげで今日は散々だーー
信号待ち、横断歩道を渡る小学生くらいの姉弟が目に入る。
仲良く手を繋いで、ゆっくり歩こうとする弟を姉が急かしてる。
《私は大丈夫だからーー心配しなくていいよ。》
《ケイは優しいね。大好き。自慢のーー》
たまに、疲れたときやきついとき。
アイツの声が頭に浮かぶ。
ボロボロになった身体で、泣きながらも笑うアイツの声が。
最近また、そういう女を見つけた。
結城 美奈。
どうやら俺はそういう女に縁があるらしい。
《 だかーーらっ。片付けなきゃいけないのっ。だからーー怒んないでっ、ごめーーごめんなさいっ。》
今までどういう男と付き合ってきたんだよ。って、わりとまぢでお前馬鹿なの?って思う。
《 でも、ミズキは本当に優しいから。》
俺もあんま人の事言えた奴じゃないけど。
それでもそいつは《優しいヤツ》ではないだろ。
何をどうやったらそいつが優しい奴になるのか。
時計を見ると14時すぎ。
ーーヤバい。
今日はまだ何件か用事が残ってる。
ユキに店のオープンに遅れると連絡をいれて、ハンドルを握った。
ーー腹へった。
そういえば昨日から食ってねぇじゃん。
近くのコンビニでとりあえずパンと珈琲を買って、携帯いじりながらかじる。
外で食事ばっかしてると、全部が同じ味に感じてくる。
ーー不味。
部屋や店の掃除は好きだし、洗濯も好きだけど、料理だけは前から嫌いで。
作るのはまだいい。
材料さえあれば。
そのあとの片付けが最悪。
なんで鍋になんかこびりついてんだよ。
包丁なんか、どうやって洗うんだ?
挟んで洗おうとして、2つに切れたスポンジを見た瞬間 、一気に萎えた。
自炊を試みたのは独り暮らしを始めた初日だけ。
次の日には場所を取ってて目障りだった鍋やらなんやらの調理器具を全て捨てた。
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