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ーーーーーヴォー。
(うるさいなぁ。)
重たい身体、重い瞼。
眠りを邪魔する、不快な機械音。
ーーゴツッ。
『痛い!』
突然、肘に痛みを感じて、私は急に起き上がった。
『ちょっと、何すーー』
文句を言おうと顔をあげて、見覚えのない光景に言葉を飲み込む。
どこだ、ここ。
『いったーー』
やばい。二日酔いの痛みだ。
痛む頭に手を当てて、記憶を呼び起こす。
確か店の子たちと飲みに行ってーー
二件梯子したあとパンケーキ食べに行ったんだっけ。
それからーーそう、ダーツだ。
ダーツバーで騒いでーーー
そこで辺りを見回した。
(昨日のダーツバーだ。)
どうやら酔いつぶれた私は、そのまま店の床で寝てしまったらしい。
「ーー邪魔。」
後ろから声がして、振り返った。
『誰!?』
後ろには、掃除機持ってすごい迷惑そうな顔した男の人。
黒い髪にゆるくパーマをかけてて、ぱっちりした目に通った鼻筋。
顎から鎖骨のラインが綺麗。
ガリガリに細いわけではないけど、がっちり男らしい。って体型でもない。
「誰って、ここの店員だけど。」
『あ、あの。私どうしてここに?てか今何時ですか?』
どうしてここにいるのかは何となく分かるけど。
床に寝転がってた自分が恥ずかしくて、思わず聞いた。
ーーてか、起こしてよ誰か!
店のスタッフの意地悪な笑顔が思い浮かぶ。
「知るかよ。俺が出勤したときには既にあんたそこに転がってたし。ちなみに今は朝8時。」
『8時!?って、痛っーー』
自分の大声に、また二日酔いの頭痛。
今日が仕事休みでよかったとはいえ、朝8時。
こんな時間までこんなとこで寝てたとは。
『あの、なんかすみませーー』
とりあえず謝って。さっさとこの空間とおさらばしよう。
そう思って起き上がりかけるけど、強い頭痛にまた踞った。
『つっーー』
やばい。ちょっと今、立てる感じじゃない。
でもさっさとここから出ないと、酒に飲まれて床に転がってた女のレッテルが剥がれない。
「お前ーー」
店員さんが掃除機の電源を切って、目線を合わせるようにしゃがみこんできたとき、入り口のベルが鳴った。
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