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商品を受け取って、店をでた。
ここからパーキングまで、少し距離がある。
これだから街中って好きじゃない。
寒っーー。
あとどこ回るんだっけーー
考えながら歩いてたら、ポケットの携帯が震えた。
「ーー何。」
かけてきたのは、ショウ。
「あ、ケイくん?今いいすか?」
「あ~うん。」
ダウンのポケットに左手を突っ込む。
「いや、今日サキちゃんのバースデーですよね?」
そうだよ。
だから寒ぃなかこんなとこ歩いてんだよ。
「そうだけど。」
「花、いいんすか?」
「あーー」
やべ、忘れてた。
沈黙で悟ったのか、ショウの笑い声が聞こえる。
「だと思った。またglowの件で忙しくしてるんでしょ。」
「そう。今から花間に合う?」
「一応、もしかしたらと思って用意してます。ケイくんならうちで頼んでくれるって信じてました。」
ちなみにこいつ、花屋で働いてる。
いかつい顔してるくせに花屋かよ。って言ったら「心は乙女なんです。」って冗談言ってたっけ。
「ならそれ、サキの店届けといて。」
「名前、どうします?」
店の名前で。って言いかけて、
「俺とユキの名前。」
って答えた。
その方が、あいつは喜ぶ。
そういう女だから。
プライベートな繋がりがある。って、そう周りに見せたがる女だから。
「分かりました。ならそれで。」
丁度車に乗り込んだ辺りで電話は終わって、次の行き先を考える。
これからの時間、道が混むんだよな。
イラつきにタバコをくわえて、エンジンをかけた。
久しぶりに早くから起きてるせいで、眠たい。
次に向かったのは大手の不動産会社。
またパーキングから歩いて、店内に入った時の暖かさにほっとする。
出てきた社員の顔を見て、誰だっけ。って思った。
どこかで見た気がする。
客ーー?
「ーー本日は、どういったご用件で?」
「駐車場を2台契約したいんですけど。」
「こちらにおかけください。」
カウンターに座ったら、さっきの社員が向かいに腰かけた。
「場所は、どちらをお考えですか?」
店の住所を伝えながら、やっぱり見たことある。って思う。
客で来てるなら覚えてるはず。その自信はある。
ってことは、やっぱ知らないやつかーー。
考えるのを辞めて出された書類を見ようとして、一緒に置かれた名刺に目が止まった。
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