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ただ単に目が合っただけで何を勘違いしたのか、青年実業家風の男のテンションが異常だ。もっとも、こういう類の輩に奏多は縁が深い。下手に相手をすると逆効果になることは経験で知っていた。
奏多は無言で背を向けたが、青年実業家風の男の目はギラギラしている。
「僕は優しいからね。男だからって気にしなくてもいい。こっちにおいでよ」
「痴漢だって駅員さんに言いたくありません。君も立場があるでしょう。痴漢なんかですべて失いたくないはずです」
奏多は男である自分が痴漢だと騒ぎ立てるのもいやだし、圭多を連れているからどうしても躊躇う。
「君、可愛い顔していけない子だね。僕は痴漢なんてしていない」
青年実業家風の男に圭多の顔を見られている以上、恨まれるようなことはできないが、そろそろ限界だ。
奏多が駅員を見つけた時、圭多が真っ赤な顔で言い放った。
「気持ち悪い奴」
可憐な圭多の口から出た一言に、青年実業家風の男は激昂した。
「……き、君も可愛らしい顔をしているがマナーがなっていない。……あぁ、僕に怒られいのかな?」
青年実業家風の男の意識が奏多から圭多に向けられた。
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