蜃気楼

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車に戻ると、別府の鞄が目にとまった。証拠となるものは崖から投げ捨てた方がいいかと考え、手に取る。一応中身を確認する。すると、財布や手帳の他に、タオルで包まれた物体とロープを見つけた。包まれたタオルを開くと、それは包丁だった。綺麗な光沢を放っていた。 これを何に使うつもりだったのだろうか。別府が墓参りの前に、こんな周りに何もない、人気のない場所に連れてきたのは偶然だったのだろうか。さっきの別府の「お前に罪を償わせる。」という言葉の意味は、警察へ連れていくことだったのだろうか。あるいは…。 俺は包丁を片手に持ち、これからどうすべきかを考え始めた。外はまだセミの声が鳴り響いていて、蜃気楼が立ち込めていた。
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