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その晩、夢を見た。
ふらふらと、まるで不思議な世界に迷い込んでから出口を見つけ出てきたような感覚で家に帰った筈なのに、いま私は夜の草むらの中に立っていた。
遠くに光る電灯がぽつんとあるだけなのに、なぜか周りが何かに照らされているかのように明るく見える。
コロコロと虫の鳴き声が響き、どこかで小川が流れる音もする。
(ここは・・・・・・)
きょろきょろと見渡すそこはまるで絵に描いたような草むらで、私はなぜかここがひどく懐かしく感じた。
ザァッと吹いた風が髪を持ち上げる。湿った土と草の匂い。ほんの少しだけ冷たいそれを私は知っている筈なのに、どうしてか、私はここがどこなのか全く思い出せなかった。
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