不思議なノート

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不思議なノート

「うーん。今日も楽しい一日になりますように」 朝、布団の中でウトウトしつつ、そう言って起きた彼女の名前は、ミラ・ティアー。 ここは、シャタ国。 魔法使いが住む国だ。 ミラの家族も魔法使いで、シャタ国ではティアー家を知らない人はいないというくらい有名な魔法使い一族だった。 もちろんミラも魔法使いのはず…なのだが…。 「おはよう。ママ」 ミラが眠い目を擦りながら、リビングに入ってきた。 テーブルには、ミラのママが作った美味しそな朝食が並んでいた。 と言っても、全て魔法で作っているため、あまり手は加えていない。 「おはよう。ミラ、顔を洗っていらっしゃい」 「はぁい」 そう言って、ミラが洗面所に行くと 「おはよう。ミラ」 「おはよう。お兄ちゃん」 ミラが話しているのは、2つ上の兄のサナ。 2人は同じ魔法学校に通っている。 「ミラ、今日は進級テストがあるだろ?大丈夫か?」 「うん…多分。心配、ありがとう。私は、大丈夫だよ」 ミラは、魔法使い一族のはず…なのだが、魔法があまり上手く使えないのだ。 その事でミラは悩んでいた。 朝食の後、朝の当番があるサナは先に家を出た。 その後にミラ。毎朝の光景である。 そして、ミラは必ず学校に行く前による所があった。 そこは、家の近くにある空き地。 そこにある大きな岩に座る、その場所はミラにとって癒しの場所でもあった。 でも、今日はいつもと違った。 ミラが何気なく岩の裏側に回った時 「何?このノート」 1冊のノートを見つけた。 それは、真新しいノートで、誰かが使った形跡も無かった。 ノートを見つめるミラだったが、 「ヤバっ。学校に遅れる」 と、慌ててそのノートをカバンにしまうと走って行くのだった。 学校に着いても、ミラはノートの事で頭がいっぱいだった。 進級テストもそれどころでは無かった。 今回の進級テストは、コップに入った水をお湯に変えるというものだったが、ミラはそれさえも集中出来ずに、失敗した。 学校が終わるとすぐ、家に帰った。 「ただいま」 「おかえり…ミラ…」 言うやいなや、ママの声も聞かずに、部屋に閉じこもった。 イスに座ると、カバンからノートを出し、机に開いた。 「何か書いてみようかな」 独り言を呟くとペンを持ち 「今日は、進級テストがありました。私は魔法が苦手で、コップの中の水をお湯に変えることが出来ませんでした」 と、そう書いた。 すると、ノートにスラスラ~と文字が浮かび上がってきた。 (それは、残念だったね。でも、それは初歩的な魔法だから、練習すれば必ず出来るようになるよ) と。 「えっ?何このノート」 ミラはビックリして、叫んだ。 「返事が来るの?」 そう言って、 「ありがとう。私はミラ。あなたは誰?」 と書いた。 (さぁ?それは、秘密。いつかわかる日が来るよ。それまで、魔法の練習を頑張って。) ノートの返事にミラは、少し疑問を持ちながらも、それから毎日ノートにその日の出来事を書くことにした。 それは、次の日もその次の日も続いた。 そんなある日の事。 「今日は、コップの水をお湯に変えることが出来たの。魔法が使えるようになったわ。嬉しい」 そう書いた。 すると… (おめでとう!ミラ。今日は、私のママを紹介するわ) ノートにそう書かれた。 「ママ…?」 ミラがそう呟くと (初めまして。ミラ。このノート、役に立っているみたいね。良かったわ) (これは、あの時のあなたに必要だと思って私が置いてきたものなの) と書かれた。 「えっ?あなたは誰?」 ミラが書くと (私は未来のあなた。今まで書いていたのは、私の娘よ。魔法が上手く使えなくて悩んでいた時期があったでしょ。だから、あなたを元気付けたくて。このノートには、未来とお話が出来る以外に書いた人の魔力を少しづつ増幅させる力があるの。) 未来のミラがそう答えた。 「じゃあ、私のために…?」 続けて書くと (それもあるけど…。あなたには魔力の基礎が足りないのよ。でも、今日は成功したでしょ?それも、増幅の効果ね。) 返事が来た。 「じゃあ、私はもう魔法は使えないの?」 ミラは不安になり、尋ねると (その逆よ。もう、あなたは大丈夫。魔力の基礎が身に付いているから、普通に使えるようになっているの。だから、このノートでお話するのも今日で最後ね。) と返事が来た。 「ちょっと待って!」 ミラが書こうとすると (あなたは大丈夫だから。もう、おしまい。これからのあなたの成長を楽しみにしているわ) スラスラ~とそう書かれ、突然ノートが光った。 それとともにミラは意識を手放した。 「…ミラ…ミラ…」 名前を呼ぶ声が聞こえてきて、ミラは目を覚ました。 「ミラ…夕飯よ。いつまで寝ているの?」 ママの声だった。 「今、行く!」 ミラは机に突っ伏して寝てしまっていた。 ミラの目の前には、真新しいノートがあった。 そのノートを開くと… (頑張って!応援してる!) の文字が。 「夢?」 そう思い、ノートに文字を書き込んでみるが、何も起こらなかった。 「やっぱり、夢か…」 ミラは長い夢を見ていたようだった。 そう呟くと、夕飯を食べに行くのだった。 次の日の朝。 「おはよう。ミラ」 ミラが起きてリビングに行くと、兄のサナが朝食を食べていた。 「おはよう。お兄ちゃん」 「今日は、進級テストだろ?頑張れよ!」 「うん!ありがとう!」 ミラはそう答えると、朝食を食べ、学校へ向かった。 途中、空き地の岩の裏側を覗いたけど、ノートは無かった。 でも、この日ミラは晴れ晴れとした気持ちだった。 進級テストに合格出来ると。 学校が終わると、ミラは走って家に帰った。 「ママー」 叫びながら家に入ると、ママに抱きついた。 「どうしたの?ミラ」 ミラは見てみてと言わんばかりに、ママに進級テストの結果を見せた。 すると、 「すごいじゃない!2階級も昇級したのね!」 ママもビックリしていた。 「ママ、やっぱり夢じゃなかったのかも!」 ミラがそう言うと 「夢?なんの話し?」 ママが、?という顔をしたので 「ううん。こっちの話。」 ミラが言うと、 「今日の夕飯は、ご馳走にしなきゃね!」 ママがルンルンと夕飯の用意をし始めた。 ミラは自分の部屋に入ると 机の上に置いていたノートに 「進級テストに合格しました。ありがとう!」 そう書いた。 返事こそ来なかったものの、 (おめでとう) と声が聞こえた気がした。
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