奇術師と泥棒

2/5
前へ
/43ページ
次へ
扉はしばらくの間ガタガタと揺れていたが、 「やっと諦めたか」 死神はその場から姿を消したようだった。 扉を押さえつけるように座り込んでいた雷は、「よっこらしょっ、と」普段は使わない掛け声を掛けて起き上がり、手探りで部屋の灯りのスイッチを探り当て軽く押した。 数度の点滅を繰り返した電球は、すぐに部屋中に光をもたらした。 「こんなの初めて見るな」 【弾薬庫】と書かれていた扉を思い出しながら、整然と並んでいる棚から拳銃に使うであろう弾を手に取って眺め、 「一体どれだけの数あるんだよ」 数もさることながら、種類の豊富さに驚き、キョロキョロと見回しながら砲弾の置いてある一番奥まで進むと、 「誰だお前! 」 気配を消して座り込んでいた男を見つけて身構えた。 「お前こそなんだ? ここには入って来れないはずだぞ」 顔を上げて睨みつけてくる男の眼光は、雷が今まで見た誰よりも鋭かった。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加