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「あんたこそどうやってここに入った」
厳重に巻かれていた鎖、外からしか掛けられないはずの鍵を思い出す。
「質問の答えになってないな」
男は立ち上がり、首一つ下にある雷を威圧するよう見下ろした。
鍵を開けずに中に入ったのか、入ってから鍵を閉めたのかは分からなかったが、何故この男がこの密室に存在するのかは長身で端正な顔を見て理解した。
「あんた、天丸玄也だな」
雷が小学生の頃、【天才高校生、百年に一人の奇術師】としてテレビで活躍していたからだ。
「あんたがどうやってこの部屋の中へ入ったのかは分からないが、俺は簡単に鍵を破ったぜ」
憧れて真似をしているうちに、手先の器用さは誰にも負けなくなった。
玄也は、見下ろしている雷を観察、
「コソ泥というわけか」
鼻を鳴らして嘲笑して見下した。
空き巣を生業にしていた事を図星された雷は、語気を強めて言う。
「コソ泥でもあの死神達から逃げ切った! 」
数十分前、講堂に集合していた百五十人はいたであろう参加者達が、数十人の死神の鎌に狩られていた姿を思い出す。
講堂を抜け出て、この自衛隊駐屯地跡から逃げ出そうたした参加者は、異常に巻かれた有刺鉄線に阻まれ焼け焦げた。
何人生き残っているのだろう、何故こんなゲームに参加してしまったのだろう、後悔の念が押し寄せ狂いそうになるところを、
「そんな事はどうだっていい。
邪魔だから、ここから出て行け」
憧れていた玄也からの威圧的な態度で、後悔は怒りへと変わって本来の目的を取り戻す。
「俺は金持ちになるためにこの場所へ来たんだ!
あんな奴らに殺される訳にはいかない、絶対に出て行かない! 」
この言葉に玄也は冷たい目を見せ、
「【 C H OIC E!上級編】サブタイトルは覚えいるか?」
思っていたのと違う反応に、
「ら……【LIFE or DEATH】だろ」
素直に答えてしまう。
「そうだ、【生】か【死】かだ。
お前にその覚悟はあるのか?
ここに残りたいなら俺を殺してみろ」
玄也の挑発に雷は乗った。
「俺は生き延びる、絶対にだ」
カーゴパンツの左太腿にあるチャックを開け、
「俺の【生】にあんたの【死】が必要ならやってやる」
バタフライナイフを取り出した。
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