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「あ〜〜……っとぉ…おはようございます?」
壁ドン男と俺の間にほうきをすべりこませ、さりげなく向こう側に押しやる…うわ、動かない。
「おはようございます、麦くん」
…それだけ。
それだけ言って、また目の前の男は俺をニコニコと見つめ始めた。
「…学園長、俺お仕事してるんで」
「うん、見ればわかるよ」
「そうですか、なら、戻らせてください」
ニコニコニコ。
…いや無視かよ。
別にお仕事大好き人間じゃないが、一応やると決めたことはやるんだよ俺は。
「ちょ、学園長」
「…まだ生徒たちは来ていませんよ」
「…?そうですね」
「だからまだ、私のお仕事は始まってません」
「…あらそうですか」
「なので、学園長ではなく…にいさん、ってよんで」
背筋に、ぞわりと何かを感じた。
俺の本能が、ここから逃げろと警鐘を鳴らしている。
ここの学園の学園長…俺の義兄さんはその恐ろしいほど整った顔面をフルにいかした笑顔を振りまきながら、俺を瞳でとらえて離さない。
言いたかないが、言わないとてこでも動かなさそうな美形の男に大きなため息をつく。
「…おはよう、義兄さん。どいて」
「うん、おはよう、麦」
やっと離れてくれた義兄さんは満足そうに微笑んだ。
あーーめんどくせ。
「めんどくさいとか、にいさん傷ついちゃうな」
心読むなよ。
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